アメリカでのエンロン崩壊に見る、会計事務所の未来。

2001年12月から半年の間に、アメリカではエンロン、ワールドコムという巨大企業の倒産が続いた。前者は総額160億ドル以上、後者は410億ドルと言われる巨額の負債を残し、ともに米国史上最大規模の倒産劇だった。

粉飾決算により起こった企業倒産
刑罰強化で企業統治のあり方を問う

エンロンやワールドコムの倒産の一因である粉飾決算。それは、世界5大監査法人の一つである名門企業アーサーアンダーセンの息の根も止めた。エンロン事件では、当初から監査担当のアンダーセンへの批判が強かったが、担当者による監査書類の破棄の指示が明らかになり、組織ぐるみでの粉飾見逃しという状況証拠が揃い、当初のアンダーセンの「あくまで担当会計士個人の犯罪」という主張は崩れていった。2002年3月14日、アンダーセンは司法妨害罪で起訴された。アンダーセンは、たった1通のe-mailで有罪となり8月末には監査業務を停止。170日の裁判の後、事実上消滅、85,000人の会計士は職を失った。2005年アンダーセンは最高裁で逆転無罪の判決を勝ち取ったが、これらの事件はアメリカ企業の会計情報開示への大きな不信を生み、アメリカ市場の株価を大幅に下落させ、企業統治改革の嵐を巻き起こしていく。 米国では「企業改革法」が成立、経営者の犯罪を「重罪」として刑罰の強化を盛り込んだ。ここでは、アメリカ政府のスピーディな対応に着目すべきだ。この動きは、エンロン破綻から半年余りの出来事である。事件後の規制強化や、国内での企業制度改革の一連の動きは、経営陣に企経営のあり方を改めて問い直し、企業統治の強化や取締役会の役割に大きな衝撃を与えた。

"鎖国"でバブル崩壊後は地獄
世界を覆う統一会計基準

軍隊、コカ・コーラ、会計事務所―こう揶揄されるように、会計事務所はアメリカの覇権主義の象徴である。経済のグローバル化により、国際会計事務所は世界中で同等のサービスを提供しなくてはいけなくなった。90年代に世界の会計監査をリードしてきたビッグ・ファイブと呼ばれる米国大手会計事務所は、世界中に進出を図った。日本にも直営の会計事務所を作るために進出しようとしたが、日本では官民とも反対し監査法人の名前にカタカナを認めないなどの行政指導までして、アメリカ大手会計事務所の進出を阻止しようとした。この日本の鎖国性は、バブル崩壊後大きなツケとして圧し掛かってきた。BIS基準は日本の銀行を奈落の底に突き落とし、会計の国際化は日本の企業に巨額の損失計上を迫った。現在の国際会計基準の大きな特徴に、「時価会計」が挙げられる。時価会計とは、期末の決算書に載せる帳簿価格を期末の時価で測るというものである。過去アメリカは、自国の会計基準が最先端であると誇り、世界基準を統一することに積極的では無かった。しかしエンロン事件でアメリカ基準の信頼が揺らいだことで、世界の会計のパワーバランスに大きな変化が生じた。国際基準は、今後世界150ヶ国で使われることになっている。アメリカ導入も目前であり、世界基準の誕生は間違いない。

事務所の統廃合・電子申告の普及…
日本への波及も必至か

最後に、アメリカにおける会計事務所マーケットの動向だ。アメリカではビッグ4以外のH&Rブロック社等が中規模の会計事務所をフランチャイズ化し、税務において様々なサービスを展開。小規模事務所は他の士業との連携で、総合事務所を目指す所も増えている。所得税の確定申告が全員に課せられるアメリカでは会計ビジネスに携わる人が多いが、支出が大きい部門のコストダウンや、お互いの得意分野を生かした幅広いサービスが提供できるといったメリットから、会計事務所の統合化が加速している。またこの10年間、アメリカでは電子申告の普及が急速に進み、電子申告数は2004年までの10年間で5倍以上に。IRS(アメリカ内国歳入庁)の資料によれば2007年5月4日時点で個人所得税申告の59,9%にも上った。標準化されたものを大量に短時間で処理することに向いているため、合理化しやすく、低価格でサービスを提供できる。数千円という処理費用は、まさにコンピュータによる価格破壊である。既にアメリカで急速に広がる“税務決算業務の価格破壊”。アメリカで起こった現象は数年後日本で必ず起こると言われているだけに、近い将来この動きが日本でも加速する可能性は高い。その時会計事務所が生き残るにはどうすべきか?その問題を突きつけられる時期はすぐそこまで来ている。